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こども学科

私のヒーロー

植物を育てるのが上手な人って、いますよね。
弱って売れ残っていた花の苗を見事に咲かせたり、10年以上も大事に育てている観葉植物が、さりげなくお部屋に置いてあったり。

私は本当に植物の世話が下手で、これまでにいくつもの失敗を重ねてきました。
「初心者向け!」「とにかく丈夫!」、お店の人がそう太鼓判を押した鉢植えを買ってきても、2か月もすると、確実に元気がなくなってきます。毎回慌ててネットでいろいろ検索して、なんとかしようとがんばるものの、結局持ち直すことなく、枯れたり腐ったりしてしまう。

そんなときは、本当にがっかりして、もう何かを育てたりすることはやめようと思います。でもしばらくすると、やっぱり部屋に緑、あってほしいなあと、お花屋さんをフラフラと物色しはじめて・・・(以下、略)

今もまさに瀬戸際にいる鉢植えが、手元にあります。
4年くらい前に買ってきたときには、たっぷりした大きな葉がいくつも広がっていたのに、すこしずつすこしずつやせて、すっかり小さくなってしまいました。先月土を入れ替えたところ、新しい葉が出てきて、少しホッとしたところです。でも、まだまだ全く安心はできません。

そんな私には、憧れの人がいます。
『はちうえはぼくにまかせて』(ジーン・ジオン作、マーガレット・ブロイ・グレアム絵、もりひさし訳、ペンギン社)という本の主人公、トミーです。よく知られた絵本ですが、少し内容を紹介します。

トミーは、鉢植えの世話がとても上手な男の子です。
夏休みになってもパパの仕事が忙しすぎて、家族でどこにも出かけられないトミーは、天才的なおこづかい稼ぎの方法を思いつきます。休暇で家を空ける近所の人たちから、留守中の鉢植えを預かって世話を引き受けるというお仕事です。

トミーは、近所中から鉢植えを預かります。ものすごい数の鉢植えですが、トミーはそれぞれの鉢植えが好きな場所を知っていて、ぴったりのお世話をすることができます。トミーはとにかく研究熱心で、眠っている間も世話をしている植物のことを考えています。

トミーは はちうえのせわが じょうずです。
「この はちうえは ひかげが いいな。
こっちの はちうえは ひなたが すきなんだ。」

トミーの献身的な世話のおかげで、預かった鉢植えは元気になって、ぐんぐん育っていきます。トミー 一家は、ジャングルのようになったリビングや森の中のようなお風呂で暮らすことに。

しばらくすると、休暇を終えた近所の人達が、鉢植えを引き取りにやってきます。みんな自分の鉢植えを見て「まえよりも すてきになっている」と驚きます。トミーが研究して増やした鉢植えをもらった子ども達も、大喜びです。トミーの仕事は近所の人達みんなを笑顔にしました。

トミーが大仕事をやり遂げた頃、パパの仕事もひと段落し、これからトミー 一家の楽しい夏休みがはじまる、というところで、物語は終わります。

この絵本には、主人公トミーの、カラッとしたたくましさと賢さ、熱心さ、かわいらしさがたっぷりと描かれています。トミーの活躍とともに、パパの仕事が忙しいあまり、ちょっと不穏になるトミー 一家の様子も目が離せません。隅から隅まで眺めて楽しい絵本です。

(磯村陸子)