居場所

はがき

まもなく1年生にとっては専門ゼミⅠの選択がやってきますね。

私の学生時代の所属ゼミは、大人になった今でも「居場所」といえるところ。今回は、そんなことを書いてみたいと思います。

当時、私の通う女子大で学部長を務められていたK先生はショートカットの生え際に紫色がほんの少し入り、いつも某女性ブランドMを着ているらしいという噂があったほどとにかくおしゃれ。ご夫婦で心理学の共同研究をされていて、知性と気品あふれる「理想のデキる女性」といった雰囲気の本当に素敵な、そして厳しい方でした。

ここで私は高校時代からずっと学びたかった「心理学」の世界へと踏み込んでいくわけですが、このゼミが本当に大変で。 たくさんの専門書を読みこむのはもちろんのこと、宿題は専門用語だらけの英語の文献。毎回の授業は10名足らずの少数でセッションをしているので全く気が抜けない。全員が常に全力投球状態でした。

いや、違うな…。一度私たちが宿題をあまりに適当にやってきたことに怒り心頭、その日の授業をやめて研究室へ帰ってしまわれたことがありました。こんなこともあって、全力投球になったのですね。学びは自らすすんで得るものと教えられました。

でも、大変なことを一緒に乗り越えてきたからこその、まさに同志といえるゼミメンバー。3年生の今頃の季節だったと思います。夏合宿という楽しい企画が持ち上がりました。

大学は軽井沢に宿泊施設を持っていたので、K先生もお誘いして親睦を深めようということになり、避暑地の街でお買い物して、テニスして、花火して、夜はみんなでお酒飲みながらトランプして…などと夢が膨らみます。

ところが、いよいよ夏休みが近付いてきたころ、K先生から衝撃の発表が。なんと「K先生企画・夏合宿時間割」ができていたのです。もちろん宿題も・・・。

え、がっつり組み込まれている授業って何??宿題ってなに??と全く現状を理解できない私たちですが、当然のこととしてカリキュラムを作ってくださったK先生のご提案には誰も抗えず、結局、日中はいつもの大変なゼミがただ「場所を変えて」行われました・・・

でも、今になって思えば、本気で文句を言う人はいなくて、あーやっちゃったね…という感じだったような気がします。なんだかんだ言ってもK先生が大好きで、尊敬していて、K先生らしいご提案をそのまま受け入れてしまったという感じでしょうか。

夜の自由時間は普通の夏合宿らしく。K先生から、普段は聞くことのできないご夫婦のことや、好きなお酒のお話などもお聞きしたりと楽しく過ごしていました。

夜も更けてきたころ、囲んでいたトランプの席を立ち「では、そろそろみなさんだけで。ババ抜きでもどうぞと去っていったK先生の一発ギャグ??は、今でもゼミ仲間が会うたびに話題になります。

(その後、全員で寝ていた大部屋で、恋バナで盛り上がったり、なんと心霊現象が起きたりと思い出はつきませんが、それはまたいつか別の機会に。本当に楽しかったなぁ。)

 

さてさて。実は、いまだに数年ごとにゼミ会をしています。

お元気な頃はK先生も毎回楽しみに参加してくださり、懐かしい話で盛り上がり、結婚・出産・退職・再就職など人生が大きく変化していく仲間に刺激を受け。卒業して何年経っても、普段は会うことも連絡を取り合うことがなくても、相変わらずの同志がそこにはいて、いつまでたっても、私の「居場所」がここにあると思えるのです。

学生の皆さんの周りにもゼミ以外にサークル、アルバイトなど様々なコミュニティがあると思いますが、私自身にこんな思い出があるからこそ、皆さん1人ひとりにも「あたたかい居場所」があったらいいなといつも願っているのです。

 

はがきこのハガキは、20年ほど前のものです。

私の母が亡くなったことを知り、K先生がお花とともに送ってくださいました。

写真の裏には細かい文字でびっしり、先生の愛が詰まっていて今読んでも涙が出ます。

 

(by沢谷)