キッズビジネスコースの挑戦!

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2021年4月、こども学科に新たなコースが生まれました。その名も「キッズビジネスコース」です!

本学の特徴を生かし、「経済学」と「教育学・保育学」をどちらも学べるコースで、おそらく他の大学や短大にはない本学独自のカリキュラムになっていると思います。

本コースは、初等教育コースや保育コースとは異なり、「小学校教諭」、「幼稚園教諭」の免許や「保育士」の資格の取得を目指さずに、子どもや経済のことを学ぶコースなのです。

「先生の免許も保育士の資格も取得しないコースに、いったい誰が行くの?」

このコース創設の話を聴いた時、きっと誰もがそう思ったことでしょう。正直、僕自身も、「免許や資格の取得を目指さないコースに、いったい誰が入学するんだ?」、と半信半疑でした。

(注:キッズビジネスコースでは、小学校・幼稚園教諭の免許と保育士資格は卒業時に取得できませんが、ビジネスライフ学科で取得可能な諸資格やこども学科で取得可能なリトミック指導者資格、レクリエーション・インストラクター資格、図書館司書資格等は取得できます。また保育士試験を受けることも可能です。)

教育や保育の世界の「常識」では、教員免許や保育士資格を取るために、ほぼ全ての高校生が本学に入学してきます。「『こども学』を勉強したいから入学を希望します」という高校生を僕は見たことがありません。本学のみならず全国の保育系短大の存在理由ともいえるこの「免許」「資格」の取得を前提としない「こども学科キッズビジネスコース」…。

ところが、なんと9名もの若者たちが今年、本学キッズビジネスコースに入学してくれたのです。女子学生5名に、男子学生4名でした。

これには、キッズビジネスコースの演習を担当することになった僕にとっても驚きでした。「なぜ、キッズビジネスコースに入学しようと思ったのだろう?」。心から不思議に思いました。

その理由を本コース一年生の学生たちに尋ねると…

●子どもには興味があるけど、幼稚園の先生や保育士になりたいわけではなかったから。

●子どものおもちゃや洋服に興味があったから。

●子ども向けのキャラクターやテーマパークが好きだったから。

●子ども関連の一般企業に就職したかったから。

●一般企業に就職しつつ、子育ての勉強もできると思ったから。

●早く結婚して、よいお母さんになりたかったから。

●このコースに入学して勉強した後に、大学編入を目指すか、一般就職を目指すかを決めたかったから。

といったものが出てきました。

「なるほどー!」と思うものから、「あれれ?(苦笑)」と思うものまで、本当に一人ひとり、それぞれの理由をもって入学してくれました。

こうした学生たちの希望や期待を裏切らないように、こっちも真剣にやらなければ、と思いました。

しかし、僕は、そもそも「教育学」「こども家庭福祉」「社会的養護」「赤ちゃんポスト」などを研究するどっぷり「こども学(教育学+保育学)」の人間。キッズビジネスの世界に詳しい人間ではないし、キッズビジネスの現場に立ったこともありません。

…であれば、学生9名と一緒にキッズビジネスのことを色々と勉強していけばいい。そう思うに至りました。

僕は、「教育の根源を考える教育哲学」の研究者でもあり、「教育の実践哲学」についての論文や本も書いてきました。なので、おそらく普通の人よりも、少しは「学び方のコツ」は掴んでいるつもりです。(教育学者は、何かについての専門知識や専門的技能に長けているというよりは、その対象が何であれ、その「学び方」や「学ぶプロセス」や「学ぶ能力そのもの」についての知識や技能に詳しくなければなりません!)

そこで、キッズビジネスに関係しそうな本をいっぱい読み、またその業界の動向を調べ、どのような企業があり、その中のどれだけの企業が「短大卒」で採用してくれるのかを徹底的にリサーチしてみました-また、本コースの「演習ゼミ」でも学生たちを巻き込んでみんなで調べたりもしました-。

そうすると、キッズ関連ビジネス業界は、とてもとても活気があることが分かってきました。矢野経済研究所の研究報告によると、2019年度のこの業界の市場規模は以下の通りだったとされています。

2019年度の国内子供関連ビジネス市場規模(38分野計)は、前年度比1.6%増の15兆2,048億円となった。分野別に内訳をみると、家庭用ゲーム市場やテーマパーク・遊園地市場といった「娯楽用品・レジャー」分野が好調だったほか、「保育関連サービス」分野では幼児教育・保育の無償化の好影響もあり保育園市場やプリスクール市場が伸長した。一方、「教育サービス・教育用品」分野は全体的に微減基調にある(引用元:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2490)

端的に申し上げれば、キッズ関連ビジネス業界は「好調」ということです。コロナ禍においてもなお、その好調は続いているという話も多々聞きます。

しかも、調べていくと、採用条件に「短大卒以上」であれば、多くの企業が若者たちを採用していることが分かってきました。もちろん「大卒以上」という企業もありますが、短大卒でも十分に、あらゆる分野で活躍することが可能だと分かってきたのです。

その際に、キッズビジネスコースの学生たちは、「経済学」と「教育学・保育学」を学んできたことをアピールすることができます。一般企業であれば、「免許」も「資格」も必要ありません(多少有利になるとは思いますが…)。それより、2年間で、経済学と教育学・保育学を学んだことの方が意義深いのでは、と思うのです。学生たちの時間割を見ると、経済学関連の講義と教育・保育関連の講義をうまくミックスして学んでいることが分かりました。

とはいえ、まだまだ始まったばかりの「新コース」。実際、どうなっていくのかは誰にも分かりません。ただ、分からないからこその楽しさやワクワク感があります。

Amazonの創業者のジェフ・ベゾスさんは、次のように語っています。

How did that happen? Invention. Invention is the root of our success. We’ve done crazy things together, and then made them normal.」(どのようにして[成功を]実現したのか。発明(創案・創意)だ。発明こそ、われわれの成功の根っこだ。われわれは、クレイジーなことを共に実行してきて、その後、それをノーマルなものにしたのだ)

それから、こうも語っています。

Keep inventing, and don’t despair when at first the idea looks crazy. Remember to wander. Let curiosity be your compass.」(発明(創意)し続けよ。そして、最初はクレイジーだと思われるようなアイデアであっても、がっかりしてはいけない。さまよい続けよ。好奇心をあなたのコンパスにせよ)

ひょっとしたら、免許も資格も出ない本短大の新たな試みは、よそから見れば「クレイジーな試みだ」だと思われるかもしれません。そして、「そんなコースにいったい誰が入るんだ?」、と苦笑するかもしれません。

しかし、本学の校是は「良識と創意」です。創意なるものは、最初は人から「クレイジーだ」と思われるようなものであることが多いですよね。

だからこそ、僕はこのコースに力を入れたいと思っています。「大学に進学すること」や「免許や資格を取ること」が当たり前の時代に、「短大卒」で「免許」も「資格」もない若者たちが(2年間だけの学びの先で)キッズ関連ビジネス業界で活躍してくれたら、上の二つの前提(大学進学と免許・資格取得)が崩れることになります。大学に進学しなくても、免許や資格を取らなくても、十分に会社や社会に貢献でき、またその中で活躍できる、となれば、世の中も少しは変わってくるのではないかと思うのです。

…(ここからは少し大きな話を少し…)

ご存知の方も多いとは思いますが、世界的に見ても、日本の大学・短大数は800校近くあり、アメリカに次いで二位の多さを誇っています。また大学・短大進学率もそんなに低くはありません。ただ、一つ、大きな問題があるのです。

日本の大学入学者(教育段階別初回入学者)の平均年齢は約18.3歳です。この数字は世界先進国の中でも最も低いのです。つまり、日本の大学一年生はほぼ18歳で、ほとんどの学生が22歳(短大生は20歳!)で卒業していくのです。ですが、OECD諸国全体の大学一年生の平均年齢は、その22歳なのです(是非、google等で、「大学入学者 平均 OECD」で検索してみてください!)。日本の大学生が大学を卒業する頃に、世界の大学生たちは大学に入学するのです。いつ大学に行くかも、いつ就職するか、それは個々人の状況や能力に応じて各々が決められるのです。ですが、日本では、完全横並び状態で、見事に18歳で進学し、ほぼ22歳で卒業してしまっています。

このことから、キッズビジネスコースの学生には、次のような可能性があることを示しました。

【短大卒業】→【一度目の就職】→新たな学びの必要性→【大学編入】→【二度目の就職】→…

もちろん、一度目の就職でそのままその道を歩めるなら、それはそれで素晴らしいことだと思います。20歳で自分のライフワークが見つかるというのは、ある意味では奇跡的なこととも言えるでしょう。

しかし、働き方が多様化し複雑化する今日の社会においては、多くの人にとって、学びなおし(リカレント学習)が不可欠でありましょう。そのために、大学の「2年間」を先延ばしして、今できる学びをしっかりやって、社会に出て、お金を稼ぎ、その中で「更なる学び」が必要だと思った時に、大学に編入するという別ルートがあり、そういう道もまた、一つのよりよい高等教育のあり方なのではないか、と思うのです。

キッズビジネスコースの学生たちは今、「自分に何ができるのか」「どんな道を歩みたいのか」を真剣に考えながら、経済学と教育学・保育学の勉強に取り組んでいます。

僕が担当している「演習ゼミ」では、ブログ執筆やYouTube動画制作等を通じて、「子どもの世界」を清らかに発信していくスキルやテクニックを学ぶと共に、キッズ関連ビジネス業界で必要なリテラシーを学んでいます。僕自身、これからも試行錯誤を繰り返しながら、よりよいコースになるよう、尽力したいと思っています。

(柏木恭典)