パブリック・ライブラリー(公共図書館)とは・・・

一年半前、映画『ニーヨーク公共図書館』が日本でも上映され各地域で話題を呼びました。ドキュメンタリー映画で上映時間3時25分という長い映画でしたが、多くの人が視聴し、世界有数の知の殿堂であるニューヨーク公共図書館の舞台裏を垣間見るなかで、「公共図書館とは、どうあるべきか」を問う作品でした。ここでDVDが発売されましたので総合図書館でも購入したいと考えています。

さて、今年の7月にアメリカの公共図書館を舞台にした映画が上映されました。『パブリック 図書館の奇跡』です。

コロナ禍で映画を鑑賞することもままなりませんが、どうしても見たい映画でした。

この映画のチラシには、次のように書かれています。

アメリカのオハイオ州シンシナティ、記録的な大寒波により、緊急シェルターがいっぱいで行き場がないホームレスの集団が図書館を占拠した。突如勃発した大騒動に巻き込まれたひとりの図書館員の奮闘を軸に、笑いと涙たっぷり、予測不可能なサプライズも盛り込まれた感動作。

監督・主演は、エミリオ・エステベス。エステベスの父親は映画「地獄の黙示録」に出演したマーティン・シーン、そして弟も俳優チャーリー・シーンです。

図書館とホームレスの関係は、日本の図書館でも話題になりますが、それは、いつも“”公共”とは何かを問われることになります。私も現役の時(立川市図書館で司書として働いていた時)、その対応にあたっていたことがあります。

この問題を真正面から扱った作品として『パブリック 図書館の奇跡』は、興味深く、題名の中の“図書館の奇跡”からラストがどうなるのか、気になっていました。

千葉経済大学短期大学部には司書課程があり、長きにわたり司書の養成を行っています。司書は公共図書館で働く専門的職員であり、いつも“パブリック(公共)”ということに心していなければなりません。つまり、パブリック・サーバントとしての司書を意識する必要があると思っています。

と長々と書いていましたが、私はまだこの映画を見ていません。このブログを書くまでには見たいと思っていたのですが、事情があり見に行くことができませんでした。

そのような中で司書課程の非常勤講師を務めていただいている松田典之先生がすでに見ているということで、この映画の感想をお願いしたら快く引き受けてくださいました。

松田先生の感想を以下にご紹介します。

 

★『パブリック 図書館の奇跡』 松田典之

最近、図書館を舞台とした映画やTVドラマが増えているように思います。もちろん昔からそのような映画やドラマはありましたが、昔のものは図書館に関する描写がひどいものが多くありました。逆に最近のものは、よく調べてあるなと感心するようのものが多く見受けられます。

最近、見た図書館映画に『パブリック 図書館の奇跡』があります。

これは、アメリカ・オハイオ州シンシナティ公共図書館が舞台となっている映画です。

主人公は、この図書館で職員として働くスチュアート・グッドソン(エミリオ・エステベス)です。彼の働く図書館では、ホームレスが寒さをしのぐために毎日来館しています。

ある日、大寒波がきて、緊急シェルターが満杯で、行き場を失ったホームレス達は、閉館時間が過ぎても図書館に居座り、館内に立て籠もってしまいます。主人公は、彼らの状況を気の毒に思い、館長に滞在を認めるよう願い出ますが、認められません。やがて、警官隊やマスコミが集まり始め、スチュアートは、立て籠もりの首謀者に仕立て上げられてしまいます。

図書館を包囲する警察、郡検事と立て籠もるスチュアート達との交渉が続いていき…

これ以上はネタバレになりますので、興味のある方は映画を見てください。

 

この映画では、現代アメリカが抱える問題、ホームレスなどの社会的弱者の問題が描かれています。アメリカ人が自分の権利が不当に侵害されたと感じた時に、どういう行動をとるのかという視点でみると、とても興味深い映画です。

劇中ではスタインベックの「怒りの葡萄」の一節が引用されています。

「怒りの葡萄」は、アメリカ図書館協会(ALA)が「図書館の権利宣言」を作成する、きっかけとなった小説です。この映画の製作にあたって、図書館について詳しく調査したことがわかります。また、「図書館は民主主義の最後の砦だ」というセリフがあるように、アメリカ人が図書館をどのように見ているかもわかります。

製作・監督・脚本・主演のエミリオ・エステベスは「現代において、図書館員は事実上のソーシャルワーカーであり救急隊員だ。」(映画パンフレットより)とALAのインタビューで答えています。それは日本の司書においても同じであると思います。

新型コロナウイルスの関係で映画の視聴もままなりませんが、DVDが発売されたら総合図書館で購入し、見ていただきたいと思います。

“パブリック”とは何か、“図書館の奇跡”とは何かをぜひ確認してみてください。

(by齊藤誠一)