ワープロ事始め

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まずは写真の「ふじ」。今年は関東地方に4月としては明治の気象台開設以来という大雨が降った。山は春の大雪である。お蔭で雨の翌日は4月には珍しい裾まで雪を被った富士山を拝むことができた。短大の校歌の二番で「見はるかす海のかなたに/そびえ立つ富士は神山(かみやま)」と歌われるように、千葉からも富士山はよく見える。千葉駅前には「富士見」という地名が残っていて、昔は東京湾を隔てて富士山を仰ぐことができたのだろう。今では高いところからに限られるが、特に空気の澄んだ冬によく見える。短大からは校舎5階の一角から眺望することができる。

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さて授業開始がままならぬまま季節は巡り、桜の次の藤の紫、そしてつつじの赤に移りつつある。幸か不幸か今年は近所の公園の花を眺めている余裕があるが、散歩をしている人、街路をランニングしている人も多い。私の担当のパソコンの入門の授業、教室のパソコンで全員同じ環境での実習が前提なので、困ったものです。そこで今回は、普段最初の授業などでしている「昔話」からすることにしよう。

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道具の進歩は人間の生活を便利なものにしてくれる。パソコンでのワープロの実現もその一例である。今から約40年前まで、英文(欧文)の場合は「タイプライター」という事務機器を使っていた。「仕事で使った」という経験があるのは、大体私と同じ現在60歳以上になる世代である。「英文タイプライター」はキーボードで叩いたアルファベットの文字が、すぐに用紙に打鍵される仕掛けになっている、手入力の英文清書印刷機といったところである。ちなみに現在のパソコンのキーボードのQ、W、E、……で始まるアルファベットのキーの順序、配置はタイプライター時代のものをそのまま継承している。大昔、英文で使う文字の頻度などを考慮して決められたものらしい。もちろん日本語用の「和文タイプライター」もあるにはあったが、こちらは何千種類という漢字に対応するため、仕組みが複雑で高価なもので、操作にも熟練の技能を要したらしい。残念ながら私は和文タイプの実物にお目にかかる機会はなかった。

 
このタイプライターとワープロとの大きな違いは記憶装置の有無である。英文タイプライターではうっかり間違ったキー(文字)に触れて打ってしまったら、紙の最初からやり直しである。原稿用紙に手書きと同じである。完成間近の紙を丸めてもう一度最初からということになる。また紙の右端近くになったらどの単語で改行にするのか、あるいはハイフンで次の行につなぐか、気を使わないといけなかった。

 
そんな悩みを一挙に解決してくれたのが、コンピュータを使った文書清書システム-ワードプロセッサー(ワープロ)の登場である。当初英文のみの対応であったが、しばらくして漢字変換システム(辞書)の実現で、和文にも対応するようになった。現在のようなパソコンで使える日本語のワープロソフトが登場し、企業や大学の研究室で使われるようになったのは、1980年代半ば以降のことである。これで文字の入力ミスなどに関わるストレスはほとんど解消し、喜んだのを覚えている。これはコンピュータが記憶装置を持っていて私たちが打鍵した文字を記録しているからである。また長い文章(段落)では紙の右端の位置や1行の文字数に合わせて自動的に折り返し、次の行の先頭へ移動してくれる。英文の場合は、音節で正しくハイフンを入れて単語を行の途中で分けてくれたりする。

 
「えーそんなこと当たり前だよ」と思うかもしれませんが、これらは先人が苦労してワープロというソフトウェアに順に組み込んできた「プログラム」なのです。ところが学生さんの中には文章を入力するとき、見本の文書を見ながら行の右端までくると、タイプライターよろしくせっせと改行(リターンキー、Enterキー)を入れている場合もあって驚いてしまうことがある。後から文字を追加しようとすると改行の位置がずれてしまって、「先生大変!」というところで発覚する次第である。

 
ここに書いたのは少々極端な例ですが、せっかくですから「自己流」を脱して、ワープロの機能を使って見やすい文書を効率よく作成することを心掛けてほしいと思うこの頃です。ワープロの入力のときの基本画面に表示されているボタン(アイコン)のうち、文字(フィント)の種類とサイズ、文字の配置(左揃え、中央揃え、右揃え)、箇条書きあたりの使い方をマスターしておくだけでも大分違います。さあ、実習室での授業が再開できたら一緒にがんばりましょう!
(by 西川篤志)