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小説 こども学科とわたし

コピー こども学科とわたし

「こども学科とわたし」

 「なりたい私に向かって、羽ばたく力を手に入れる。」
社会人になり、いかなる困難に直面しようとも、千葉経済大学短期大学部での学びを糧に、乗り越えてきた先輩が大勢います。こども学科で学んだ卒業生への取材を基に、1話完結の短編小説を連載していきます。
第3話「シンボルアート」

 
 社会人2年目の春。新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、生活は一変した。私が働く保育園も登園自粛の要請を受け、登園する園児はかなり減った。担当したクラスの1歳児は、今のこの状況を理解できない。とはいえ、私のエプロンを引っ張っては自分の気持ちを一生懸命伝えてくれるようになり、心がどんどん成長している彼らもきっと、何かを感じとっているはずだ。

③こども学科3

 園児の笑い声がまばらになった園庭で、最近、ふと思い出したことがあった。
 去年の夏、保育士になって半年が過ぎた頃だ。私の母校、千葉経済大学短期大学部の在学生が授業の一環で来園した。保育園は教育・保育研究施設として短期大学部と連携しており、本日の保育は短大生が本園の子どもたちと触れ合うことを目標としている。教室では、ペットボトルを使った工作が行われていた。ほうぼうが笑い声に包まれていた。


プレゼンテーション②

「私も経済(短大)だったんだ。卒業生なの。」
 ある学生に声をかけた。
「えーっ! そうなんですか?」
 思わず、キラキラとした大きな目に吸い込まれてしまいそうだった。
 学生はすかさず、
「ここ(保育園)に決めた理由って、何だったんですか。」
と聞いてきた。保育園の就職試験の面接以来、あまり聞かれたことがなかったので、一瞬、頭が真っ白になったが、やがて「直感かなぁ。」という気持ちが頭をもたげた。
 直感。辞書には「感覚で物事をとらえること」とある。根拠はさておき、物心がついた頃から自分の直感を信じてきた。たくさんの絵画が目の前にあったとして、その中からたった一枚だけを選んで自室に飾るとしたら、「これだ!」と思えるものを見つける自信が私にはある。まさに「シンボルアート」とも言えるだろう。

こども学科とわたし②

 学生時代、この保育園を見学した時もそうだった。こちらが挨拶する前に、いろいろな先生が声をかけてくれる。その温かさに「ここだ!」という直感が走り、私は今、ここで働いている。迷いなき決断はやはり間違ってはいなかった。だからといって、順風満帆だったわけではない。実践的な保育に関わるようになってからは、園児の安全を第一に何事にも慎重に考えるようになった。階段を介した遊びを企画した時は、心配や不安が先走ってしまったが、遠くから主任の先生がうなずいてくれるだけで安心した。
 園児を見守る私を、陰ながら応援してくれる先生方がいること。こんなご時世だからこそ、目の前のことに改めて感謝したいと強く思う。
 授業後、当時の園庭では確か、経済の学生たちが園児と並んで記念撮影をしていた。スマホのシャッターボタンを押した学生が、
「すごい! 今年初の、いい写真撮れたかも。」
と叫ぶと、「どれどれー。」と他の学生たちが集まってきた。園児も学生に代わるがわる抱っこをしてもらいながら画面を覗いていた。
「飾ったら、いいんじゃない?」

園児の声に、学生たちは目を細めていたっけ。
「今年初の、いい写真撮れたかも。」
その言葉を聞いて、学生たちもとっておきの「シンボルアート」を見つけられると確信した。自分の直感を感じたら、それを信じて前に進んでほしい。悔いのない学生生活を思う存分に楽しんでほしい。そう思った瞬間、「ガンバレ!」とつい、口走っていた。

取材:保育コース(2018年度卒 K.Nさん)
小ばと会なでしこ保育園勤務
小ばと会なでしこ保育園と本学園は、2014年より教育・保育研究に関する連携を結んでいます。

こども学科とわたし④

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 第2話「嵐の一日」

 保育園の中庭からは、すべての教室が見渡せる。芝生を照らす太陽を見て、今日も一日頑張れそうだと思った。何を隠そう、先日、私は札幌に飛んだ。「嵐」のコンサートを見るために。私に限っていえば、「嵐」が表紙を飾る雑誌は何でも買うし、天気予報の「嵐」にも即座に反応する。ファンならではの「あるある」として、どなたか賛同してくれるだろうか。
 1階の「梨組」に、1、2歳児が集まってきた。園児20人。私を含む3人の先生で担当している。

保育園外観

 順次降園の時間を迎えていた。あかね色に染まる夕焼けが美しい。中庭に佇む私に「大丈夫だよ!」と肩を叩いてくれたのは、同じく経済短大を卒業した同僚だった。
 梨組では今日、「あるある」では済まされないことが起きた。園児が立て続けに、複数の園児にかみついたり、引っ掻いたり。芽生えた自我とは裏腹に、自分の気持ちを言葉にできない年齢。とはいえ、いかんともし難いとは言っていられない。加・被害者園児のケアをし、状況を説明した両方の保護者に謝罪。先程、対応を終えたところだった。

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 「お人形を本物の赤ちゃんだと思って。」
 夜、真っ暗な布団の中で、不意に浮かんできたのは、経済短大の乳児保育の授業で講じていた先生の言葉だった。保育士になって2年。園児にも常々伝えてきたつもりだ。ぬいぐるみにお布団を掛ける園児を見た時、こちらの意思を理解してくれたんだと、無性に嬉しかった。「かみつきがあったらどうしよう。」私が不安を抱けば、当然、それも園児に伝わってしまうことに気づいた。

Tさん②

 12月恒例「冬のお楽しみ会」の日。梨組の先輩である3〜5歳児が主体となり、歌や楽器演奏を披露する園の一大イベントだ。5歳児のキャンドルサービスが静かに始まる。
 あれからの私は、クラスの先生ととことん話し合い、かみつきが発生しやすい場所、時間帯を予測することで、未然に防げるようになった。「これが欲しかったんだね。」言葉を継げない園児の気持ちを代弁することで、意思の疎通をする。確実に何かが伝わる。そう、一つひとつ、丁寧に。
 宴もたけなわ、クリスマスソングを歌う先輩園児の姿に、梨組のみんなを重ねていた。来年以降、お楽しみ会の演目初参加となる彼ら。ひと回りもふた回りも成長した姿を想像するだけで、胸に込み上げてくるものがあった。

取材:保育コース(2017年度卒 T.Mさん)保育園勤務
【参考文献】先輩に学ぶ 乳児保育の困りごと解決BOOK 1歳児クラス編、2歳児クラス編
監修:横山洋子(千葉経済大学短期大学部 こども学科教授)
著者:波多野名奈(千葉経済大学短期大学部 こども学科准教授)

Tさん④

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第1話「旅立ちの日に」
 
 保護者、園児、園児、保護者、園児、卒園児......。
 園庭には、順番を待つ長蛇の列ができ、最後尾に立つ私を見つけては、園児が駆け寄ってくる。しゃがんだ私は、めいっぱい両手を広げた。
「まさみせんせいー、おはよう。」
子どもが笑顔になる、この瞬間がたまらなく嬉しい。

幼稚園外観

 経済短大を卒業し、この幼稚園で社会人になった。初めての年少さん。身だしなみに気をつけ、元気よくあいさつをし、保護者への気配りもする。毎日をこなすことで精いっぱい。それでも園児は泣き荒ぶ。
 ブラウスのボタンに苦戦する子を見ながら、パッと浮かんだのが、経済短大の先生の言葉だった。
「泣いているからやってあげるのではなく、次に泣かずにできるよう、手助けしてあげよう。」
ボタンを1個だけ、はめてあげた。
「もう一個は、自分でやってみようか。」
私の声に園児は顔を上げ、コクンとうなずいた。経済短大での教えに助けられた瞬間だった。

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 行列は時折舞う砂ぼこりに、一瞬、大きく乱れたものの、子どもたちの笑い声は絶えない。
 2年目。年長を担当することに戸惑った。主任は夏子先生。おっかなそうで、内心、ビクビクしていた。就学に向け生活リズムを意識させるなど、これまた新たな課題で精いっぱい。個性的な園児の対応に追われ、クラスが立ち行かなくなったあの日。できない自分にいら立ちながら職員室に戻ると、夏子先生が何も言わずに紅茶を入れてくれた。
「ありがとうございます。」
口をつけると、ほんのり甘い。カップの底には、星みたいにコンペイトウが散らばっていた。
「子どもの反応を見ながら、その子に合う接し方を探していけばいいよ。」
先生の言葉に顔を上げた瞬間、涙がこぼれた。
 経済短大時代、教育実習に行った時、巡回中の先生に同じような言葉をいただいたことが瞬時によみがえる。
 うまくいかないことだってある。日々、実践と経験を積み重ねていくしかないんだ。

幼稚園②

 夏子先生みたいな先生になりたい。
 目標を見つけ、今や5年目。私も「主任」という立場になった。製作や園の行事のカリキュラムを立てるなど、園の運営にも携わっている。
 行列は、先ほどより長くなっているようだった。さて、何て言葉をかけよう。お別れの挨拶をするべきなのに、気がつけば、自分のことを振り返っていた。ご家族の転勤に伴い、今日で退職されてしまうなんて。
 園庭に連なる行列の先には、夏子先生がいる。 


                     
 
取材:初等教育コース(2014年度卒 N.Mさん)幼稚園勤務
【参考文献】ユーキャンのまんが 保育者1年目の教科書(株式会社 自由国民社)
      監修:坂東眞理子(昭和女子大学総長)、横山洋子(千葉経済大学短期大学部 こども学
      科教授) 

幼稚園④

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※こども学科は、保育士・幼稚園教諭を目指す「保育コース」と小学校教諭・幼稚園教諭を目指す「初等教育コース」の2つの専門コースに分かれています。
初等教育コース
取得できる資格
小学校教諭二種免許状、幼稚園教諭二種免許状
(卒業と同時に両方の免許状の取得が可能)

オプション資格:
レクリエーション・インストラクター、リトミック指導者、図書館司書、児童指導員


保育コース
取得できる資格
保育士資格、幼稚園教諭二種免許状
(卒業と同時に両方の資格・免許状の取得が可能)

オプション資格:
レクリエーション・インストラクター、リトミック指導者、社会福祉主事任用資格

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