召し上がれ!

 このたび、本学こども学科の柏木先生が、著書を出版しました。タイトルは、『学びの実践学-教師に必要なこと、ラーメン店主の学びにあり-』。本の帯には、“教育学とラーメンをブレンドした、濃厚な一冊を召し上がれ!”というフレーズが。どんな内容の本なのか、柏木先生[:ラーメン:]に存分に語っていただきましょう。


 はい、柏木です。(このブログでは)はじめまして。
 2015年 2月に、構想10年をかけて、『学びの実践学-教師に必要なこと、ラーメン店主の学びにあり-』(一茎書房)を出版いたしました。実に、340ページの厚い本になっていますが、字が大きいので、読みやすいと思います。
 さて、この本の内容、タイトル通り、ラーメンと教育の話です。僕のことを知っている学生や卒業生であれば、「あー、ついに出したか?」という感じだと思います。
 この本のテーマは、「オトナの学び論」です。オトナとして、プロとして、またプロになる実践者として、ますます不自由になりつつある今の時代に、どう学んでいけばよいのか。どう学ぶことが最善なのか。そのことを、「ラーメン店主の学び」に着目して、どんどん話が展開していきます。
 この本一冊で、ラーメンについて詳しくなり、教育学のことも詳しくなり、実践哲学の世界にも入ってしまう、という、まさに「トリプルスープ」の一冊になっています。(*トリプルスープとは、例えば丸鶏+煮干+牛骨というように、三つの食材の旨みが一杯のラーメンのスープから感じられるスープのことを言います)
 この本の趣旨は以下の四つです。
 1.ラーメン店主さんの学びは少し変わっていて面白い。それを「学び」という視点で考えてみたい。
 2.教師教育の本は、概して、抽象的で、難しくて、読みにくい。頭の賢い先生にはよいかもしれないけど、庶民的な先生には、学者先生が書いた小難しい話はついていけない。もっと身近なところから、そして、どこまでも具体的に、教師に届く言葉で、教師の学びを描いてみたい。
 3.僕が学生時代から尊敬する斎藤喜博先生のことを、多くの人にも知ってもらいたい。斎藤先生は、僕にとっての「憧れの教師」。でも、今の教育学ではほとんど彼のことは扱われていません。が、本学は、斎藤先生の教育学を大切にしています。
 4.このままだと、日本の教師は本当に大変なことになる。どうしたら、普通の教師や実践者にとって一番届く学び論が描けるだろうか。
 これらの思いが実際にどこまで反映できているかは分かりませんが、頑張りました。
 日本の多くの人にとってとても身近なラーメン店主の話から、教師やその他の実践者の学びについて描けば、きっと伝わってくれるだろう、と、ひそかに期待しています。内容的には、結構重たいと思いますが、ラーメンという身近な食べ物を例に出すので、分かりやすいというか、腑に落ちやすいと思います。
 さて。
 この本は、序章に始まり、四つの話から成り立っています。ここで、簡単に内容をご紹介いたします。
 第一章は、ラーメンの歴史とこれからのラーメンについて語っています。これまで出版されてきたラーメンの本を集め、それをコンパクトにまとめました。この第一章を読むだけで、大体のラーメン論は網羅できると思います。これまで15年にかけて収集してきたラーメン本の大筋が分かります。これを読めば、ラーメンの歴史や文化の全体像がつかめると思います。と、学者の意地にかけて頑張りました。
 現代のラーメンを示す言葉として、ラーメンの「ローカル化」と「グローバル化」について詳しく書いています。ローカル化は、単純に「ご当地ラーメン」の話です。グローバル化は、「インターナショナルなラーメン」の話です。どちらも、僕が大好きな分野で、どちらもかなりマニアックに、かつコンパクトにまとめています。p.51-55の「ご当地ラーメンリスト」は、是非見てほしいです。世界のラーメンについても、より分かりやすくまとめました。特に欧州のラーメンをずっと食べ歩いてきた人間の体験談として、読んでいただければ、と思います。
 第二章は、ラーメン店主さんの学びについての事例研究です。フィールドワークを武器としている身として、この第二章は、かなり気合いが入っています。ラーメン店主さんはどうやってラーメンの世界に入り、どうやって学び、どうやってプロとなっていくのか。具体的なエピソードを交えながら、ラーメン店主さんの学びの世界を記述していきます。
 そして、ラーメン店主さんに特徴的な学びのポイントを四つにまとめて、それぞれを解説します。実は、その学びは、教師の学びととても通じるものがあり、そのことも書いています。ラーメン店主さんから学ぶ、オトナの学び方は、とてもユニークで、面白くて、深いものです。この第二章を読めば、「そうか、そうやって学べばいいのか!」というのがよく分かると思います。とはいえ、単なるハウツー本にはなっていません。学び方のポイントの指摘のみです。これを読んで、そのコツというか、視点だけでも、感じてもらえれば幸いです。
 第三章は、ラーメン店主さんの学びを、教育学的に、色んな視点から考えていきます。ここでのキーワードは、「修業」と「独学」という二つのワードです。ラーメン店主さんは、修業でもなく、また独学でもない、不思議な学び方をしています。それを教育学的にどう語っていけばよいのか、うねうねと論じながら、それを言葉にしていこうとしています。
 その際に、注目したのが、「修業」と、同じ発音の「修行」の二つの対比です。ラーメン店主さんの学びは、本来の意味での「修行」に近いのでは、と。そして、その本来の修行というのは、単なる独学ではなく、極めてコミュニケーション的な学びになっていて、しかも、文字通り、「修めにどこかに行く」、という学びになっているのです。つまり、動いて、歩いて、見て、感じて、学んでいるのです。とても動的な学びといいますか。これを「修行としての独学」と命名して、論を展開しています。
 第四章は、実践とは何か、また理論とは何かということについて、解釈学的に考察しています。が、元原稿が学会誌に掲載された論文で、学生たちにはとても読みにくく、とっつきにくいので、四章は読み流して、エピローグにお進みください。そして、この章をとばして、エピローグを読んだ後で、もし余力があったら、是非(頭の体操と思って)チャレンジしてみてください。個人的には、一番力を入れている箇所です。本のタイトルどおり、まさに「学びの実践学」を展開しています。
 構想10年。これまでにないタイプの教師論になっていると思います。一冊で、三度美味しい本といいますか。また、「文体」が最初と最後で全然違うというのも、面白い点だと思います。そして、何より、本当によい本になったと確信しています。
 是非、読んでみてください。