研究室訪問(吉村香先生・保育系科目担当)


 吉村香先生は、今年10年目を迎える「こども学科」開設の一年前、旧初等教育科最後の年に本学に赴任され、保育系科目の担当者として中心的役割を果たしてきました。
 
 ここでは、「乳児保育」「家庭支援論」の授業に込めた思いと、そうした授業を理論的に支える「保育者の省察」の研究についてお話を伺います。


1.「乳児保育」の授業の目的と内容をお聞かせください
保育の世界で「乳児クラス」というと0~2歳児の3学年をさします。
人生最初の3年間に、何を最も経験してほしいかというと、「私はこの人に大事にされている」「私はこの人から必要とされている」という感覚です。
この感覚が身の内に育つことで、人間一般への信頼感がのちに芽生えるのです。
その「乳児保育」の基本精神を理解し、乳児が生まれてからどのように大きくなっていくのか、その道筋を細かく知ってもらう授業をしています。
2.乳児の保育は家庭でも昔からなされてきました。職業としての専門性はどこにあるといえるのでしょうか
家庭での養育と、保育は明らかに違います。「乳児」の保育に限っていえば、「あなたを大切に思う者がここにいる」という気持ちを常に持ち続け、乳児にそれが感じられるような発信をし続けることに、専門性があると思います。
親にそれができるでしょうか。夫婦喧嘩をしているさなかにも?
保育者はミルクをあげながら、おむつを替えながら、生活のいかなる行為にもその気持ちの持続と発信が伴うわけです。
3.「家庭支援論」の授業の目的と内容をお聞かせください
家庭とは皆さんにとってどのような場ですか?その場を共有しているメンバーはあなたにとって、どのような存在ですか?こんな問いかけから始めています。
まずは皆さんが「家庭」という場をどんなふうに経験してきたか、どのようにとらえているかを自覚するためです。その自覚を抜きに、よその家庭を支援する、あるいは今どうすることが支援になるか考えることはできません。
家庭というのは誰かから支援されるべきものなのか?とことん考えることを通して、考え抜くことの辛さと喜びをも知ってもらいたいと願っています。
4.先生のご研究について、お聞かせください
私は保育者が保育を行いながら、また、保育を後で振り返ってどのようなことをどのように感じ直したり考えたりするのかを研究しています。
この、保育者の感じ直し、考えることを省察といっています。反省と考察を併せ持つ精神作業といえば、わかりやすいでしょうか。
保育者は、子どもと一日中あそぶことが仕事だなんて呑気なものだとか、それって誰にでもできるでしょうとか、いろいろと誤解されやすいのです。
が、些細に見えてしまう何気ない保育行為の一つひとつに、保育者の理由があります。そしてこの理由には、一人ひとりの子どもに対する教育的な願いも含まれているのです。決して、ただあそんでいるのではありません。
保育学生になって、その奥深さに触れ、改めて子どもを見つめ直す学生時代を過ごしてください。
5.高校生に一言メッセージをお願いします
二つ言ってもいいですか(笑)?
  どうぞ
一つは、高校生の本分である勉強を投げ出さずに取り組んでください。
学ぶことで開けてくる世界がどんなに自分を豊かにするか、知っている人に保育をしてもらいたいからです。
子どもとあそぶ仕事に因数分解は関係ないと思うのは大きな間違いです。言い訳をみつけて投げ出した人に「がんばれ」とは誰も言われたくないですよね?
二つ目は、生活を楽しんでください。保育者は生活者です。季節を感じとって、その季節らしさを生活のどこかに取り込んでみたり、食事や入浴、何でもよいのです、どこかにこだわりを持ったりしてみてください。
ご縁あって入学式でお会いできることを期待しています。