お金の話

 2016年6月23日(木)にEU離脱の是非について国民投票が実施され、イギリス国民は「Yes」を選択した。その影響が株式市場で軒並み株価の下落を誘引し、およそ200兆円以上の「お金」が市場から消えていった。また為替市場ではイギリスの経済の先行き不透明感によってポンド安、ドル高、円高が進み世界に大きな激震を与え、ポンドのプライドが失墜した。今後、EU離脱の過程でポンドが振り子のように大きく揺れ動いていくと思われる。経済活動が垣根(境界線)を超えてグローバルに展開していくと、そこに思わぬ落とし穴が待っていたことになる。2016年6月23日(木)はイギリス経済の栄枯盛衰の転換点(ターニングポイント)として歴史に刻まれことになるかも知れない。
pic03
 江戸幕府開府以前、東アジア一帯は、銀や銭が交換手段の貨幣として流通していた。すなわち、銀が国際通貨として、また秤量貨幣(取引のたびにはかりで計量する:4進法の由来)として使われていた。慶長6年(1601年)、徳川家康は国内を武力だけでなく経済の側面からも天下統一を果たすため、徳川氏だけが作る貨幣を統一貨幣(国内各地で流通していた貨幣の通貨統合)として、また東アジアから独立した日本独自の通貨として、貴金属である「金」を計数貨幣として流通させるシステムを作っている。ここにも「お金」に関わる大きな転換点を見ることができる。
 江戸時代、「お金」は地域・品物・身分・階層などによっていろいろなお金の使い方をしていた。例えば、
・地域によって、江戸・関東・東国では金、大阪・京都・日本海沿岸・中国・
 九州・様々な階層の人たちが集まる場所では、金・銀・銭のいずれも通用
・上等なお茶、材木、呉服、薬種、砂糖、塩等は江戸であっても銀
・加工品は銀
・職人の手間賃は銀
・野菜・魚などの庶民の日用品、旅籠の宿泊料などは銭
・大名・旗本屋敷や商家の場合、米・味噌・油などの日用品を出入り業者か
 ら購入する場合は金や銀
・海外貿易は銀
 また、支払方法については日割り、月割り、年割などがあるが、おおむね月割りによって精算していたようだ。
・金極(きんぎめ)・・・月極・・・金で月々で精算
・銀極(ぎんぎめ)・・・月極・・・銀で月々で精算
・銭極(ぜにぎめ)・・・月極・・・銭で月々で精算
*「月極」という言葉は、「駐車場」でよく使われている。これはこの時代の名残だと思われる。
 江戸時代の「お金」の使われ方は、金・銀・銭という三種類の貨幣が対等な貨幣として通用していた(金は金座で、銀は銀座で、銭は各藩が幕府のお墨付き、ライセンスを得て鋳造していたそうだ)。
 そこで金や銀の流通エリアの違いを調整するためには金・銀・銭の相場、すなわち為替市場が必要になってくる。金・銀・銭の交換比率は変動相場制、すなわち日々変動する。大きな商人や現在の金融機関にあたる両替商などは、交換比率の動向に大変な注意を払いながら大きな交換差益を享受していた。時代は違うが、EU離脱のような想定外のことや、何らかの天変地異が起こると貨幣交換比率は大きく変わることになる。
 EUの離脱、これが国家の先行き不透明感や将来の危機への入り口と見るならば、いままで威厳を保っていたポンドの相場は乱高下を繰り返すことになる。今後、ポンドの信用を得るために、いっその事ドルの裏面に書かれている言葉「In God we trust」 に頼る必要が出てくるかもしれない。
                参考文献:鈴木浩三『江戸のお金の物語』
                     ビジネスライフ学科:澤村孝夫
追記:
 松尾芭蕉と一緒に東北の旅をしていた曾良は、「曾良旅日記」に、敦賀から終着地である大垣に至る14日間の旅で1人1両(約10万円)の旅費がかかっているという記事を書いています。芭蕉が歩いた期間3月27日から9月1日(旧暦)までの5か月間、全行程約2,400キロの旅費は????????これから、松尾芭蕉の辿った道を歩きながら、じっくり計算してみようと思います。